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連載 親子で鳥日記② 「ヒヨドリの渡りを見る」

「ヒヨドリの渡りを見る」

 毎年10月になると家族で真鶴岬へ出かけている。ヒヨドリの渡りを見るためだ。ヒヨドリは街中でもヒーヨヒーヨと大声で鳴いているのを見かける鳥だが、秋になると一部の鳥は国内の南の地域へと渡りをする。真鶴岬ではこの時期、数百羽を超える群れが集まり、海へと飛び出していく姿が見られる。
 磯に降りて日の出を眺め、後ろの森を振り返った6時頃には、もうヒヨドリが騒がしく群れになっていた。森の上を何度もぐるぐると飛び回ったのち、決心したように海へと向かう。でも一緒に飛び出した群れが小さかったり、ヒヨドリを襲うハヤブサがいたりすると海を越える気分にはなれないらしく、Uターンして戻ってきてしまう。2度、3度と群れが海へと出ていくたびに、群れのサイズや動きを見ながら「この群れは海を渡りそうだね!」、「これは戻っちゃうんじゃない」と娘と一緒に予想し合った。3歳の時は拾った海藻で遊んでいただけだったので、娘の成長を感じる。
真鶴岬の群れが実際にどこへ渡るのかを調べた人はいないようでよくわからない。でも飛んで行く群れを望遠鏡で追い続け、消えた場所の方角と地図を照らし合わせるかぎり、どうやら伊豆諸島へ向かっているようだ。
9時を過ぎる頃には渡る鳥はもう行ってしまい、渡らない鳥は森に戻るのか、ヒヨドリたちは静かになる。かわりに観光客が増えてきた。

プロフィール
東郷 なりさ(とうごうなりさ)
絵本作家、イラストレーター。ブログに「クイナ通りSoi17」
https://narisatogo.blogspot.com/

 

 

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